ゴト師の末路

2020/05/02
11:24

おはようございます！

前回のお話で仲良くなった、

パチンコ屋さんの常連客の歳上のNさん。

この人のお陰で、パチンコ屋さんの設定情報が

僕らに筒抜けになり、

週に2回の稼働で月収が100万円を超すという

20歳そこそこの若造には出来すぎた収入が入るようになりました。

そうしている内に、僕とNさんとの距離はどんどん近くなり

次第に彼の私生活や家族構成

更には今までどんな人生を送って来たのかが

時が経つにつれて分かってきました。

毎日のように昼間からパチンコ屋さんに居る人なんて

まともな人間は居ませんよね？

Nさんもその例に漏れず

むしろ、その中でもダメ人間の部類でした笑

10代の後半から僕たちは知り合っていたのですが、

なんとNさん、その当時から

僕の知らない所では薬物の売買をしていたのです。

そこまでは100歩譲って納得しよう。

しかし、Nさんは家庭持ちで

しっかりお子さんも当時から居たようでした笑

僕は田舎育ちだったんのもあるんですが、

『家庭』

という物に持っているイメージが

…簡単に言えばアニメのサザエさんの家庭の様なイメージですかね？

両親がお勤めになっていて、

普通の暮らしをしている人が家庭を持つ。

…そういう昭和な考えを家庭に対して持っていたので

彼のライフスタイルは当時の僕には斬新でした。

漫画等で、皆さんも見たことがある展開の

『薬物の売人が薬物に溺れる』

…きっと、見たこと有りますよね？

この展開。

Nさんは泳げない人だったので

キチンとその例にも漏れず

簡単に薬物に溺れてしまいました。

最初は

『ちょっと様子がおかしい』

位の感じだったのです。

Nさんは僕たちの前では冷静…

でもないんですが、歳が一回りくらい離れていましたので

彼の大人な面を見ることが多く、

まさか彼が薬物に手を出しているなんて思ってませんでした。

そんなNさんがある日

「ボヤを出してしまった」

と言っていたんです。

僕は

「タバコの不始末でもしたんですか？」

と聞きました。

ボヤなんて大体はこんな理由ですもんね。

しかし、Nさんは予想を裏切り

「やかんを空焚きしちゃった」

と、言いました。

僕は深く追求せず、

(火をかけているのを忘れちゃったのかな？)

位に思って、その話はそこで終わりました。

そこからどんどんNさんの奇行は増え

サクラグループの人からも

「Nがヤバイ」

と聞くようになっていきます。

そしてNさんは少しずつ疎遠になって行くんですが

最後にどデカイ置き土産を置いていきます。

Nさんはサクラグループの面々にこんな話を持ってきました

「機械を付ける話をまとめてきた。」

とね。

『機械を付ける』

と言うのは、所謂

『ゴト』

でして。

簡単に言うと、

店の幹部かお店ごと抱き込んで

バックを与える代わりに

『裏ROM』

と呼ばれる

『任意の操作で大当たりを直撃』

させる事が出来るROMをパチスロ台等に取り付けて

メダルを出しちゃおう！

という簡単に稼げる英断を、Nさんはしたのです。

しかし、裏ROMと言うのは

そのROMの性能にもよるのですが

値が張ることも多いのですね

数百万円は簡単に飛びます。

…ということで、

Nさんはその裏ROMのシンジケート的な物を組もうと

グループのリーダー格に話を持ってきたのです。

当時の僕らは、反社的な感じのギスギスした上下関係のグループではなく

「一緒に稼ごう！ｷﾗｯ」

みたいな仲の良いスタンスでして

「良い話は共有する」

という流れが出来ていたので、ここまでは普通の流れでした。

Nさんの作戦は

「俺が一人で店に刺さる感じで先方には話す」

「儲けは等分」

ということらしいです。

一人で刺さる、と言っても

もちろん、毎日Nさんが行くと怪しまれるので打ち子は使います。

相手の背景にどんな人が居るかは分からないので、

リスク管理のために、Nさん一人で裏ROMのシノギを回しているように装う。

…言わば、犠牲の精神ですね。泣けます。

僕たちはNさんの男気を見たのです。

そんな提案に、リーダー達は疑うこともなく

…まあ、余裕も有ったんでね、皆さん。

そのシノギは晴れてスタートすることになりました。

資本金は、皆で1000万円位だったかな？

これから頑張って、すぐに利益にするぞ～♪

と思っていましたが…

…なんだか様子がヘンです。

Nさんは屈腱炎を起こしたのでしょうか？

一向にスタートゲートから出ません。

…よく見ると、むしろゲートに居ません。

そうです、Nさんはお金を持って逃げ出したのです！

今振り返ると、フラグの連続だったんですけどね笑

まさか仲間が裏切るなんて事は

みんな想像していませんでした。

後出しの様になりますが、

僕とNさんはパチンコ屋さんで知り合いましたが、

他の皆さんは昔からの友人でしたし

裏切るまでの長い期間、

僕たちは損得を越えた付き合いをしていたので

Nさんの裏切りは寝耳に水でした。

(このエピソードは次回簡潔に紹介します)

末期になると、Nさんは

「これが無いと寝れない」

と、睡眠薬をまるでラムネの様にガリガリしていたんで

きっとそういう事なんでしょう。

溺れきってしまっていたんだと思います。

…それからNさんはどうなったかと言うと、

僕らのグループは甘いので、

今でも当時の仲間に会うと

「Nさんは最近どうなった？」

とか

「顔を出せば良いのに」

なんて感じで、みんな気にして居ないようです。

それなら僕もお金を盗めば良かったです。